スクリーンショット 2018-09-13 9.20.39

リハビリにおける三角巾の役割

 多くの作業療法士が、大学や専門学校において教育を受けた際に「脳卒中後の亜脱臼=三角巾、亜脱臼」と言う事実をステレオタイプに学習しています。確かに三角巾や、その役割をより特化したアームスリングなどはリハビリの多くの場面で使用されます。

 しかし、三角巾やアームスリングには、肝心の亜脱臼に対する直接的な補正効果は期待できません。これは随分前から常識的に言われていることです。つまり三角巾やアームスリングには、亜脱臼を直接的に改善する要素はないと言うことです。

 ただし、三角巾やアームスリングは上肢の自重を免荷し、首や健側の肩に重さを逃がしてくれる作用があります。これにより、10kg弱ある上肢の自重が亜脱臼を呈した麻痺側の肩関節にかかることを予防し、自重による伸張痛を予防してくれます。

三角巾の弊害は??

 ですから、亜脱臼のある対象者の方には、三角巾やアームスリングを設置することで、肩関節への腕の自重を排除できるので、恒常的に装着してしまいがちです。ただし、恒常的に麻痺手に亜脱臼を装着することで、そこから生まれる弊害もあったりします。

 まず一つ目は、三角巾やアームスリングによって設定されるポジションです。三角巾やアームスリングで肩を保護した場合、大概が肩関節は極度の内旋位をとります。このポジションは、肩関節の異常な屈曲共同運動や大胸筋の過剰な収縮も伴います。
 
 したがって、三角巾やアームスリングは、上肢の自重による伸長痛から上肢を守ってくれたとしても、ローテーターカフの不使用を助長し、関節内のアライメントを低下させ、随意運動時の痛みにつながりやすいポジションを誘発します。

 次に二つ目は、麻痺手に対する感覚入力が極度に低下し、脳が麻痺手の存在を感知しにくい状況を作ってしまうことです。つまり、「脳が麻痺手を忘れてしまう」と言う状況を作り出してしまう可能性があると言うことです。

 ここで論文を一つ紹介したいと思います。


 こちらの論文では、健常者(19名、右利き)に対して、一側の上肢の使用を三角巾・アームスリングを用いて抑制し、左右の半球間抑制のバランスを測定しています。この研究では上肢はわずか10時間の間のみ抑制をしています。

 結果としては、一側の上肢を抑制することで不使用が起こった群は、通常の使用群に比べ、不使用を被った側の大脳半球の一次運動野の興奮性活動が低下し、逆半球から当該半球にかけての半球間抑制を花瓶にし、逆に当該半球から逆半球に対する半球間抑制を低下させたと述べています。

 このように、健常人における短い時間の三角巾・アームスリングの着用ですら、大脳間の半球間抑制に大きな影響を与えうる事実からも、できるだけ抑制時間を少なくし、麻痺手に対して感覚入力及び、随意運動を求めていく動きが大切になると言うことがわかります。

では、どのように肩の亜脱臼に対応する?

 近年、亜脱臼に対するアプローチにおいて、最も注目されているのが、「末梢電気刺激」である。主に肩関節のローテーターカフの一つである棘上筋、三角筋後部・中部・前部線維に電気刺激を通電し、亜脱臼の改善を図る方法です。

関連記事>>>作業療法士が知っておきたいエビデンスが確立されている
5つの脳卒中後の上肢機能訓練

 また、末梢電気刺激は使用する時間が長くなればなるほど、効能が高いと言う報告も認められるため、できればリハビリの時間以外も、電気刺激を併用するなどの試みも良いかもしれない。ただし、管理やリスクの問題もあることから医師や看護師と綿密にディスカッションする必要があります。

 さらに、立位など、リハビリの場面で上肢の自重が肩関節にかかってしまう場面では、従来通り三角巾やアームスリングによって上肢の自重を除去するとともに、末梢電気刺激を三角巾やアームスリング内にある麻痺手に通電することをお勧めしたいです。

 特に、棘上・棘下筋、三角筋後部繊維に通電することで、三角巾やアームスリングによって内旋傾向にある肩関節のアライメントを外旋傾向に補填してくれる要素を含んでおり、装着による不必要なアライメントの低下を予防できるとTKBは考えている。

これら亜脱臼に関する対応も以下の本には記載しています。興味があれば、ぜひー。